タイトル: Differentiation capacities of PS-clusters, adult pituitary stem/progenitor cell clusters located in the parenchymal-niche, of the rat anterior lobe
(Saishu Yoshida, Naoto Nishimura,Hideaki Yurino,Masaaki Kobayashi,Kotaro Horiguchi, Kentaro Yano, Shin-ichi Hashimoto,Takako Kato & Yukio Kato)
論文は下記のURLで閲覧できます。
http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0196029
生命科学科遺伝情報制御学研究室は、2018年3月31日をもって幕を閉じましたが、本論文はこれまでの研究成果の一部としてまとめられたものです。遺伝情報制御学研究室のほか、生命科学科の矢野研究室(小林、矢野)、杏林大学〈堀口)、金沢大学(百合野、橋本)との共同研究です。筆頭著者の吉田は、昨年12月から慈恵会医科大学生化学教室の助教として研究をしています。
解説:下垂体内分泌細胞は、成体下垂体の前葉のSox2発現幹/前駆細胞によって供給される。それらが存在する微小環境(「ニッチ」)には、ラトケの遺残腔に接する一層の細胞層のニッチおよび実質細胞のニッチの2種類が存在する。最近、遺伝情報制御学研究室では、実質層ニッチから細胞/幹細胞SOX2陽性細胞が密集した幹/前駆細胞クラスターを単離し、S100β発現(S100β陽性、陰性および混合型)の差異に基づいて3つのサブタイプを分取し、S100β陽性PSクラスターは、インビトロの3次元培養系で内分泌細胞に分化する能力があることを示しています。
本研究では、S100β陽性PSクラスターについて培養条件を3次元から2次元に変えた培養を行った細胞について解析した。その結果、S100β陽性PSクラスターは、二次元培養系におけいて、S100β陰性クラスターよりも活発に増殖することが観察された。 さらに、S100β陽性PSクラスターは、二次元の培養条をすることで、非内分泌細胞(Myogenin-、αSMA-、NG2-、またはSOX17陽性細胞)への分化能を示したが、S100β陰性PSクラスターではそうした分化が認められなかった。PSクラスターのサブタイプは、S100β発現の差に基づいて異なる増殖および分化特性を示していることが確認された。つまり、実質層ニッチに存在するSOX2陽性細胞の一部(S100β陽性PSクラスター)は、2次元培養条件では非内分泌細胞への分化を示し、また、3次元培養条件では内分泌細胞への分化を示し、S100β陰性クラスターと較べると、より分化の進んだ段階にある細胞群であることを示している。