要旨
世界の農耕地の約50%が亜鉛欠乏土壌であり、農作物における亜鉛欠乏の対応策の確立は急務であると言えます。明治大学農学部生命科学科の吉本准教授らの研究グループは植物が細胞内自己分解システム「オートファジー」を駆使し,亜鉛欠乏環境に対応していることを発見しました。
- 植物は亜鉛欠乏下において、オートファジーを発動して細胞内の多様な自己成分を分解することで、亜鉛イオンを回収し、必要箇所へ再供給することで亜鉛欠乏耐性を獲得していることを明らかにしました。
- 今回の発見は、亜鉛欠乏耐性品種や亜鉛高含有作物の作出に貢献できる可能性を秘めています。
- 本研究成果は、博士前期課程2年の篠崎さんが筆頭著者、吉本准教授が責任著者となった論文として、2020年1月15日付で米国植物生理学会 (American Society of Plant Biologists) 誌「Plant Physiology」オンライン版に掲載されました。本論文はオープンアクセスになっています。
論文情報
論文タイトル:Autophagy Increases Zinc Bioavailability to Avoid Light-Mediated ROS Production under Zn Deficiency
著者:Daiki Shinozaki, Ekaterina A Merkulova, Loreto Naya, Tetsuro Horie, Yuri Kanno, Mitsunori Seo, Yoshinori Ohsumi, Céline Masclaux Daubresse, Kohki Yoshimoto
掲載雑誌:Plant Physiology
DOI:10.1104/pp.19.01522
公開日:2020年1月15日 (オンライン先行公開)
URL:http://www.plantphysiol.org/content/early/2020/01/15/pp.19.01522
図:オートファジーを介した亜鉛欠乏症状抑制機構モデル
本研究により明らかとなったオートファジーによるZn欠乏症状抑制機構のモデル。Zn欠乏により誘導されたオートファジーは細胞内のタンパク質や細胞小器官を分解し遊離Zn2+を再供給することでZn欠乏状態を緩和する。Zn欠乏は葉緑体におけるFeを介したROS生成反応 (フェントン様反応) を促進することで•OHを生成する。•OHによる酸化ストレスはクロロシスとして観察される。
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