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微生物工学研究室
Laboratory of Microbial Technology
<研究略歴>
大学院博士課程修了・農学博士取得後、博士研究員等を経て、1990年に特殊法人(現・国立研究開発法人)理化学研究所専任研究員。2004年より明治大学(2011年より現職)。
<主な担当科目>
微生物学Ⅰ、微生物工学、生命科学実験Ⅰ<ひとこと>
Every day is a new day.研究テーマ
本研究室では、「健康」と「環境」をキーワードとして微生物遺伝資源の有用機能解析を行っています。現在の主要な研究テーマは、海洋酵母が生産する希少カロテノイドの生理機能解析、海洋酵母のフェノール代謝系機能の解析、および分裂酵母の脂質代謝系機能解析です。 【海からのおくりもの−海洋酵母が生産する機能性物質に関する研究】 海洋は地球上の表層の約70.6%を占めますが、その環境特異性や探索する手段が困難で限られていることからほとんどが未踏の領域であり、そこに生息する微生物は新たな遺伝資源として注目されています。そこで、本研究室では、赤色海洋酵母の「赤色」に着目しました。この「赤色」は抗酸化活性物質として知られているカロテノイドに起因します。 約400株の赤色海洋酵母が生産するカロテノイドを抽出・精製し、その化学構造を決定した結果、3種類の希少カロテノイドを見出しました。現在は、健康維持・増進等に有用な機能性物質の開発を目指して、これら3種類の希少カロテノイドの生理機能解析を進めています。 深海は一般に200メートルより深い海を指し、太陽光がほとんど届かず、性質の違いから表層と深海の海水は混合しないためほぼ独立した海水循環システムが存在すると考えられています。 本研究室では、このような特殊な深海環境から、高濃度フェノールを迅速に分解する深海酵母を発見しました。フェノールは化成品等の工業原料として産業上重要な化合物ですが、一方、健康リスクや生態リスクが知られている有害化学物質でもあります。 実際、高濃度フェノールに晒されたほとんどの微生物は死滅します。そこで、環境への負荷が少ない有害化学物質(フェノール)の分解方法の開発を目指して、高濃度フェノール分解性深海酵母の代謝系機能の解析を進めています。 【分裂酵母に関する研究】 分裂酵母はヒトの細胞と同様に二分裂増殖する真核細胞からなり、単細胞性で細胞周期が短く実験操作が容易であることなどの理由からヒトのモデル生物として大変優れた微生物です。 また、ゲノム配列解読の結果、全ORF約5千のうち43%がイントロンを持ち、ヒトと共通の遺伝子をたくさん持つことが明らかにされています。 本研究室では、分裂酵母の脂質代謝系の遺伝子発現の制御により、健康維持・増進等に有用な機能性物質の高生産システムの開発を目指した研究を進めています。
研究室メンバー
修士2年 2名; 学部4年 6名; 学部3年 6名研究業績
<学術論文>
1)Sun X, Hirai G, Ueki M, Hirota H, Wang Q, Hongo Y, Nakamura T, Hitora Y, Takahashi H, Sodeoka M, Osada H, Hamamoto M, Yoshida M, and Yashiroda Y. Identification of novel secreted fatty acids that regulate nitrogen catabolite repression in fission yeast. Scientific Reports 6, Article number: 20856, 2016, doi:10.1038/srep20856.
2)Yamauchi K, Kondo S, Hamamoto M, Suzuki Y and Nishida H. Genome-wide maps of nucleosomes of the trichostatin A treated and untreated archiascomycetous yeast Saitoella complicata. AIMS Microbiology, 2016, 2(1): 69-91. doi: 10.3934/microbiol.2016.1.69.
3)Nishida H, Matsumoto T, Kondo S, Hamamoto M and Yoshikawa H. The early diverging ascomycetous budding yeast, Saitoella complicata, has three histone deacetylase belonging to the Clr6, Hos2, and Rpd3 lineages. J Gen Appl Microbiol. 60: 7-12, 2014.
4)Takahashi H, Sun X, Hamamoto M, Yashiroda Y and Yoshida M. The SAGA Histone Acetyltransferase Complex Regulates Leucine Uptake through the Agp3 Permease in Fission Yeast. J Biol Chem, 287 (No. 45), 38158-38167, 2012.
<著書>
1)浜本牧子.2016.第1編 有害微生物の基礎 3.有害微生物の発生・汚染, 3.2 微生物の活性・不活性 [3]酵母,「有害微生物の制御と管理—現場対応への実践的な取り組み—」高鳥浩介,久米田裕子,土戸哲明,古畑勝則監修.pp. 86-87,株式会社テクノシステム,東京.
2)浜本牧子.2016.第1編 有害微生物の基礎 1.代表的な有害微生物, 1.4 酵母,「有害微生物の制御と管理—現場対応への実践的な取り組み—」高鳥浩介,久米田裕子,土戸哲明,古畑勝則監修.pp. 16-21,株式会社テクノシステム,東京.
3) Hamamoto M, Boekhout T, and Nakase T. Chapter 156. Sporobolomyces. In The Yeasts, a Taxonomic Study, Fifth Edition, pp 1929-1990. Edited by Kurtzman CP, Fell JW, and Boekhout T: Elsevier (2011).
4) Hamamoto M. Chapter 112. Erythrobasidium. In The Yeasts, a Taxonomic Study, Fifth Edition, pp 1433-1435. Edited by Kurtzman CP, Fell JW, and Boekhout T: Elsevier (2011).
5)浜本哲郎・浜本牧子. Q & Aで学ぶ やさしい微生物学. (2007年10月5日初版,2018年2月1日第4刷). 講談社,東京.
<学会発表>
1)飯沼夏生、齋藤直也、八代田陽子、吉田稔、浜本牧子
「分裂酵母のエルゴステロール生合成遺伝子の発現調節によるスクワレンの蓄積促進」
日本農芸化学会2018年度大会、2018年3月15日〜18日、名城大学天白キャンパス
2)栗原甘奈、浜本牧子
「Multidrug transporterがDebaryomyces hansenii高濃度フェノール分解能に及ぼす影響について」
日本農芸化学会2018年度大会、2018年3月15日〜18日、名城大学天白キャンパス
3)栗原甘奈、前田剛志、加藤未来、能木裕一、浜本牧子
「Debaryomyces属酵母が産生するフェノール代謝関連酵素catechol 1,2-dioxygenase(C12O)の特徴と属内におけるC12O遺伝子の分布」
日本農芸化学会2016年度大会、2016年3月27日〜30日、札幌コンベンションセン ター
4)孫暁穎、八代田陽子、平井剛、植木雅志、廣田洋、王倩倩、本郷やよい、中村健道、人羅勇気、高橋秀和、袖岡幹子、長田裕之、浜本牧子、吉田稔
「分裂酵母の窒素源カタボライト抑制を解除する分泌性活性物質の同定」
日本農芸化学会2016年度大会、2016年3月27日〜30日、札幌コンベンションセンター
5)佐藤光、津端翔二朗、能木裕一、浜本牧子
「赤色海洋酵母が産生する希少カロテノイドの生理機能解析」
日本農芸化学会2015年度大会、2015年3月26日〜29日、岡山大学津島キャンパス